東京・八王子市のDさん(四十七歳)は、一昨年の一九九三年、勤めていた機械メーカーが倒産し、職を失った。三十年近く働いて一銭の退職金も手にできず、バブル後の長期不況で再就職もままならない。もともと奥さんが病気がちで出費の多い生活だったが、それがDさんの失業で一気に悪化した。家計のピンチは、八年前に三五〇〇万円で買ったマンションの住宅ローンを直撃した。最初のうちは家計を切り詰めて何とかやりくりしていたが、それも三ヵ月、四ヵ月となると限界で、半年も過ぎるとクレジットカードのキャッシングで不足分を補填するようになった。
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「もうダメだ……」と悟ったDさんは、銀行に相談した。「このままでは返済が滞るのは目に見えていますね。多重債務に陥る危険も大きい。少しでも痛みを軽くするには、抵当権の行使で競売にかけられる前に売却するしかないでしょう」銀行の担当者はそう言い放った。結局、Dさんは二七〇〇万円でマンションを売った。あとには売却代金で返済し切れなかった借金と、精神的な苦痛だけが残った。その後、Dさん一家は、再就職が決まるまでの数カ月間、奥さんの実家に世話になり、いまでは青梅市内のアパートに住んで三万円の家賃を払いながら、残った住宅ローンを返し続けている。