家族が夕食で何を話しているかというと、その状況は、家族団楽の模範とはほど遠いので、子供は勉強の報告なんかしないし、まして親が一番気になるガールフレンドについての情報など洩らさない。そりゃそうだろう、自分の子供の頃を思い出してみても、思春期の子供が親に何でもあけすけに話すなんてことは、まあ期待するほうが無理である。かくてわが家の食卓の話題は、全員が好きな映画のことになりがちだ。つまりは、家族相互の直接のコミュニケーションという観点からすれば、まったくの無駄話をしているに過ぎない。
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しかし考えてみると、子供と学校の話をしたり夫婦が家計問題や行事予定を話し合うのは、家族という共同体の事務打ち合わせみたいなものだ。そういう場では夫、妻、子供という「役割」を離れられない。その点、映画やテレビの話題には、個人=人間として話すというニュアンスが多分にあって、このほうが本当の会話ではないかとも思う。そして子供が映画について思いがけない感想を吐くと、生意気なと思いつつもその成長を認識することもある。